2020年10月5日に発生した台風14号。
秋の台風としては珍しく速度がゆっくりとした台風でした。
さらに特徴的だったのが台風のコースです。
本州に接近したあと日本の南へ南下するコースを辿り、話題となりました。
今回の記事では台風14号のコースとその理由について解説していきます。
さらに伊豆諸島で発表された大雨特別警報についても説明するので、参考にしてみてください。
台風14号の経路図
2020年10月5日(月)に発生した台風14号は、北上して四国の南に達したあと、東方向に向かって進みました。
10月8日(木)午前11時時点での台風予報円は下図です。
この時点では、紀伊半島~東海~関東に上陸する可能性も考えられ、北東方向に進んで日本の東に離れていく予想となっていました。
しかし実際は南下して”Uターン”するようなコースを辿りました。
なぜこのようなコースになったのでしょうか。
理由として2点考えられます。
①偏西風が台風から離れた北の位置に流れていたため、偏西風に乗ることができなかった。
②上空の低気圧に引き寄せられた。
今回は理由②について詳しく見ていきたいと思います。
上空の低気圧
台風14号は、上空6,000m付近にあった低気圧の影響を受けてUターンしたと考えられます。
10月10日(土)0時から11日(日)24時までの気象衛星画像(水蒸気画像)には、台風14号と上空の低気圧の雲が見られます。
気象衛星画像
上空の低気圧は台風よりも規模の大きい渦です。
今回のように、大きい渦(上空の低気圧)と小さい渦(台風14号)が存在すると、小さい渦が大きい渦の流れに引き寄せられることがあります。
台風14号は、偏西風の流れに乗れなかったうえに、南東方向に上空の低気圧が存在していたため、Uターン台風になったと考えられます。
大雨特別警報
台風14号により、伊豆諸島を中心に大雨になりました。
10月7日(水)~11日(日)までの5日間に降った雨量は、八丈島が708.5ミリ、三宅島の三宅坪田で599ミリでした。
八丈島では10月の月間降水量の平年値が465.9ミリなので、1ヶ月に降る雨量のおよそ1.5倍がわずか5日で降ってしまいました。
三宅坪田も、10月の月間降水量の平年値は387.9ミリなので、1ヶ月に降る雨量のおよそ1.5倍が降りました。
気象庁は10日(土)午後5時、伊豆諸島南部の三宅村と御蔵島村に大雨特別警報を発表しました。
今回の大雨特別警報は基準が変更されてから初めての発表です。
これまでは、島などで局地的大雨により甚大な被害が起こった場合でも、基準に満たないために大雨特別警報が発表されないことがありました。
そのため基準が見直され、新たな発表指標が作られて今年7月30日から全国的に運用が始まりました。
具体的には、大雨特別警報の短時間指標が5km格子から1km格子に高解像度化されて、危険度を活用するように変わりました。
今回の改善により、島などの狭い範囲や、「50年に一度」に満たない雨量で災害が発生する地域でも、大雨特別警報を発表できるようになりました。
平成25年8月から運用されている「特別警報」は、これまでの事例を踏まえて日々改善しています。
このような気象情報を活用することで、気象災害が減少することを期待します。
<参考資料>
「渦と渦の相互作用によるブロッキング持続メカニズム(山崎哲)」
気象庁報道発表資料「大雨特別警報の発表に新たな発表指標を用いる改善を実施します」
チーム森田ブログ「東日本台風から1年 変わったことは」