2021年8月11日ごろから、日本付近には前線が停滞し、「梅雨末期のような大雨」になっています。
この記事では8月16日時点での大雨の状況について、天気図や降水量のデータをまとめます。
天気図:停滞する前線
前線が停滞する前、8月8日~10日ごろは、台風9号と台風10号が日本付近を通っていました。
台風が通り過ぎたあと、10日21時には日本付近に前線が発生し、15日21時まで前線が停滞していました。
※下図は8月8日から15日の天気図です。毎日9時と21時の天気図をピックアップしています。
前線停滞の理由は?
なぜ前線が停滞しているのか。
その理由は2つの高気圧が関係していると考えられます。
前線停滞の理由
- 太平洋高気圧の勢力が弱い
- オホーツク高気圧が発生・停滞
8月半ばというと、普段なら太平洋高気圧が日本付近を覆っていて、猛暑になるような時期です。
下図は2020年8月14日の天気図ですが、この日は高知県で39.8℃を観測しました。
しかし今回の天気図を見ると、太平洋高気圧の張り出しが弱いことがわかります。
さらに前線の北側には別の高気圧があります。
これが「オホーツク海高気圧」です。
オホーツク海高気圧は春の後半~夏にかけて出現し、長いと2週間程も天気図に居座り続ける高気圧です。
2つの高気圧に挟まれたことで、前線が日本付近に長く停滞していると考えられます。
線状降水帯が発生
8月12日14時ごろ、九州には線状降水帯が発生しました。
このとき、福岡県と熊本県に「顕著な大雨に関する情報」が発表され、大雨への警戒が呼びかけられました。
さらに8月14日3時30分~6時30分ごろにかけて、再び線状降水帯が発生しました。
4県に「大雨特別警報」発表
気象庁は8月14日2時15分に、佐賀県と長崎県に大雨特別警報を発表しました。
その後、福岡県と広島県にも大雨特別警報が発表されました。
大雨特別警報は市町村ごとに出される情報です。
時間が経つにつれて、4県内では特別警報の対象となる市町村が拡がりました。
大雨の特別警報まとめ
(14日午後0時45分時点)どこで甚大な災害が起きていてもおかしくない状況です…長引く雨でお疲れだと思いますが、どうか引き続き命を守る行動をお願いしますhttps://t.co/UUCyJDOhti pic.twitter.com/9jQjZmBdAh
— NHK生活・防災 (@nhk_seikatsu) August 14, 2021
わずか5日で1000ミリ以上の雨が降った所も
長引く大雨により、佐賀県の嬉野ではわずか5日で1033.5ミリの雨が降りました。
平年の嬉野の降水量を見ると、8月の1か月間の平均降水量は277.7ミリです。
1年のうちで降水量の多い6月・7月でも、1か月間の平均降水量は約400ミリの地域です。
佐賀県は1年前の2020年7月にも大雨を経験しています。
嬉野では7月3日から15日にかけて雨が降り、13日間の降水量は831.5ミリ、2020年7月の1ヶ月間の降水量は1094ミリでした。
月降水量が1094ミリというのは、嬉野ではこれまでで最も多い降水量です。
このとき、佐賀県では大雨により甚大な被害が発生しました。
今回の大雨は昨年の豪雨に匹敵する降水量となっています。
すでに被害も発生していますが、今後も数日間は雨が降る見込みで、記録的な豪雨となりそうです。
大雨をもたらした「大気の川」
筑波大学の釜江陽一先生の解析によると、「大気の川」が発生していたようです。
南シナ海から大量の水蒸気が帯状に流れ込んで、川のようになっている様子が解析されています。
大量の水蒸気が大雨をもたらしたと考えられます。
8月11日から16日までの水蒸気分布図を載せておきます。九州は今日も大雨ですが、日本列島の上流側にある九州には、水蒸気の流れが連日、直撃し続けていることがわかります。 pic.twitter.com/lljFXC6nNC
— Y Kamae (@YKamae_JP) August 16, 2021
参考
札幌管区気象台:《コラム》オホーツク海高気圧
読売新聞オンライン:長さ2000キロ超、豪雨もたらす「大気の川」出現…西日本から東北へ北上に警戒
佐賀県:防災・減災さが